YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

倉敷・帆布/畳縁/デニム/緞通

岡山編Vol.1

ひらく織チームが盛夏の産地視察に向かったのは、岡山県倉敷市。この産地の成り立ちは「瀬戸内海の埋立地」であることを発端としている。塩田として栄えた後、作物栽培へ転換。土地に適していたのが綿花だった。綿布は洋装の発展と共に需要が増加し、学生服や軍服など耐久性の求められる用途に展開。倉敷民芸も興り、文化の豊かであった土地柄であったことから茶道具に使う紐や着物の帯なども織られ、技術が高まっていく。そして多種多様な織物をカバーする、現在の産地の姿が形成された。私たちはその輪郭に触れるべく、4つの機屋を訪問した。

哲学する機屋 石井織物工場

出迎えてくれた三代目、石井八重藏さんの会話には、織物に対する信念と社会へ思想のが混在し、つながっていた。

「採算が合わないものを合わすのが仕事」。繰り返し語られる言葉は、創業から113年、積み上げてきた実直なものづくりの姿勢を表している。ギャバジン(丈夫に作られたあや織りのこと)や平織りの定番商品を織り続け、全国の商社や問屋に納品。生地幅は98〜120センチ、縫製時にロックミシンをかけなくてもいいように耳がついていて、薄く柔らかいけれど密度があって丈夫。用途は病院の白衣や学生服、袴といった耐久性が求められるものばかりだ。愛機はこだわりの豊田製、型式は「GL8」。豊田の特徴は左ハンドル。(丹後で使われている織機は右ハンドル)。織機は160回転、1日の生産は40メートル。

織機が並ぶ工場の隣室には、町の金物屋と見間違うほどの工具が整然と並んでいる。フォークリフトから始まってチェーンブロック、旋盤、チェーンソー、各種切断系電動工具にオイル類…薄明かりの自然光に照らし出される道具たちの存在感は織機に引けを取らない。「部品の80%は自分で作るし、鉄工所で直らないものはない」。

ご子息は勤めに出ている。「“継げ”とかわいそうなことは、よう言わない。今から機場にはいっても技術を伝えきれないうちに自分自身が引退してしまう。それではこの機場から採算を合わすことは出来ない」。採算という数式を組み立てる厳しさを知っているからこその本音に、優しい表情がのぞく。地域の役員や世話役も担う八重藏さん。機場を歩く合間に、「正しい素直な教育を伝えたい」「算数の式を作れる人材をつくりたい」「食べるもの、着るものがなくなったら目が覚める。そこから必要になる自立心を育てたい」と、次世代の人材育成への熱い想いを発していた。彼にとって、後継者とは自社工場の後継だけを示すのではないと感じた。

「いまうちで扱っているような小口ロットの商品は商社にも在庫はないから、なくなったら注文がくる。信用関係があってこそ、電話一本で注文を受けている。相手が惚れてくれるものづくり、欲しいと言ってくれるものづくりをしていかないと。作る・売る・買うは全て信用によって成り立っているから。そして大事なことは、自分の知恵を守る。人のものを盗まない」。平織りでオールA反をつくるのは難しく、あらゆるトラブルに対して勉強が必要になってくる。織段やスジといったエラーが見えやすいからだ。そんな織物を作り続け、築き上げた信用。それこそが機場をまわし続けるエネルギーとなって循環している。

八重藏さんは、今日も機を織り、機械を直し、世に問い続ける。

足元から日本の文化を支える
髙田織物株式会社

案内していただいたのは専務取締役髙田尚志さん。創業125周年を迎える髙田織物株式会社。明治元年のころ、初代徳太郎氏の創業時は刀の柄や備前焼の木箱に使う真田紐、小倉帯を生産。その当時に残った糸の利用をと考え出したものが「畳縁」。畳縁が広く使われだしたのは明治の終わり頃と言われ、岡山県では大正から製造が始まっている。戦後の復興期には畳の生産も増大し、畳縁の産地も盛り上がりを見せた。

昔は、畳縁と言えば色は黒か茶色で綿の無地織。商品のバリエーションはほとんどなく、価格競争も厳しいものだった。昭和37年には業界初の紋縁「大宮縁」を開発し全国に展開。差別化に挑戦するうちに、髙田織物の畳縁は1,000種類を超えていた。

そもそも、畳縁が「選べる」ものだということを、どれだけの人が知っているのだろう。流通ルートは、「畳の商社」から「卸問屋」、そして「畳店」と3つの仲介を通っている。「畳屋さんは職人気質の方が多いですし、縁の色柄を選べることを知らないお客さんも多い。何も言わなかったら普通の縁を使われてしまうけれど、意外と柄物や派手なものでも、畳にすると見え方が変わってきて」と高田さん。平成元年頃から「ハウスメーカー」と「建築設計事務所」に営業を始め、お客様が使いたい畳縁を畳店へリクエストできる流れを作り出した。

お話を聞いた場所は「畳縁ファクトリーショップ“フラット”」。壁面はカラフルな畳縁のロールで埋め尽くされて、まるで海外の手芸屋さんみたいだ。なかなか意識されることのない「畳縁」という存在を、そのまま魅力ある素材として提案。

時代を先取りしてきた髙田織物、現在の生産量は年間50万畳。全国の35%のシェアを占め、卸先の畳店は6,000店にのぼる。ちなみに、他の企業を合わせると倉敷市児島地区のシェアは80%、あとの20%は福井県産だという。この規模へと成長した秘訣を聞くと、「生産管理や種類の切替頻度などもありますが、国内メーカーであることの強みを生かして“小ロット、短期納品、多品種”に対応しています。16時までのオーダーは即日納品。供給体制のノウハウがあるので、きちんと届けたい」と教えてくれた。丹後チーム一同、びっくり。そして労務体制についてもお話を伺う。「うちは全員が正社員で、残業をしません。若いお母さんも多く、日曜祝日はお休み、時間給で入ってもらっています」。さらに、「育休の時、代わりの人をヘルプにはいれません」と社員を大切にされている。「後継者と労働力については、よくよく考えています。児島地区は特殊な町で、デニムから学生服、帆布など官民一体となって若手を育成する学校が幾つかあって。学生さんは、やはりデニムのかっこいいところに憧れる。最初から畳縁を目指す人は少ないので、小学生の頃から見学を受け入れることでファンを増やしたいと思っています」。工場見学は、単なる産業観光にとどまらない、地域に根ざした企業が、地域の人と共に歩むための道のりなのだ。

工場見学は整経工程からスタート。整経幅は20センチ(織幅は8センチ)、素材はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが主流。丹後の織物と違うのは、経糸から柄展開を考える設計。色数ごとに経糸が層になり、色が増えると生地は厚くなり、値段にも差が出る。経糸はベースになる「下糸」と柄になる「上糸(浮糸)」に分かれていて、最大で4層、つまり4色使うことができる。製織工程では、カラフルな畳縁が流れるように織り上げられる。その織元を見てみると…糸が出てくるのは針!ニードル式織機が使われている。この織機を開発したのも、なんと高田織物。昭和46年にシャトル式織機を改造。下糸を平織りにして上糸をジャカードで織るタイプや、全ての経糸をジャカードで操作するタイプの織機もある。

機料品は大阪の支店から購入し、ジャカード用の消耗品は業者に頼んで地元で生産までしている。プラスチック製のものを自社開発したり、鋳物からつくったりと消耗品にかかる経費も少なくない。それでも、それが出来ているという体制に驚く。

最後に案内されたのは先に触れた綿製の畳縁を加工する工場。昔はどこの機場にもあった綿素材。現在、自然素材として注目さているが生産を再開したくても技術が継承されていない機屋もある。「技術は細くても繋がないといけない」 。その言葉がどれほど切実に響く時代に、私たちは機場に立っているのだろう。

綿は、糸を「巻く」「バラす」「継ぎ足す」という工程が加わって、通常の化繊との価格差は約2倍になるそうだ。前加工は整経された糸を「とうもろこしのデンプン糊」に浸して「ゴムロールで絞り」「ゴミを除去」して「ロウ付け」、「ローラーの摩擦熱でロウを糸になじませて」幾つものローラーを通して「乾燥」させる。とてもアナログな機械の連続工程、ここだけ別の部屋にわけて化繊の生産にトラブルが起こらないように管理されている。目指すのは仕上がりの美しさとハリ加減。畳に縫ってつけた時に角がピッとたつ美しさ。髙田織物が手間暇のかかる綿の畳縁を作り続ける理由のひとつは、「この技術を後世に残すために」。そこには価格以上に大切なものがある。

一通りの見学を終えた私たちが案内されたのは、青空のもと、コンクリートの基礎が打たれた空き地。ここに、新しい可能性を詰め込んだ複合施設が建設される。畳の空間があり、ギャラリーやワークショップスペースが併設された空間。髙田さんは真っ直ぐに語った。「日本は畳の上で始まる文化を持っています。それがマナーやしきたりを支えている。“日本の文化を足元から支える”という、メーカーとしての責任があります」。日本の文化を体感できる場所が、もうすぐ生まれる。

岡山編Vol.2ではデニム工場と緞通の工房を訪ねます。ひらく織メンバーが倉敷産地で見つけたものとは。お楽しみに!

 

記事 原田美帆 / 写真 高岡徹

髙田織物株式会社

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