YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

愛知・岐阜/尾州×毛織物

織物産地の磁場 テキスタイル・マテリアルセンター

「ええがや!」

岐阜県羽島市にあるテキスタイルマテリアルセンター、通称「マテセン」に株式会社イワゼンの岩田善之さんの一言が響き渡った。「ええがや!」は、デザイナーも機屋も、ここに来て自分のデザインや技術や強みを見つけてくれたらいいという岩田さん渾身のひとこと。豊かな知識と経験、岩田節と呼びたくなる喋りに、瞬時に引き込まれてしまった。

「マテセン」は繊維見本市に出展される膨大なサンプルをファッション産業に役立てようと平成20年に設立された。現在では10万点を越す生地が収蔵・展示され、デザイナーやアパレル商社、産地内外の機屋や学生など様々な人に織物の可能性を提供している。東と西の間に位置するアクセスの良さ、毎年開かれるヤーンフェアへの来場、そこへマテリアルセンターが加わり、尾州は繊維関係者が引き寄せられる磁場になっている。

私たちが到着して間も無く愛媛県今治市と福岡県八女郡からも繊維関係者が訪ねてきて、尾州の岩田さん、丹後のひらく織チームと四産地が集結。名刺交換からお互いの製品や活動について会話が生まれ、立ち話が止まらない状態に。テーブルに引き戻してくれた進行役は岐阜県毛織工業組合の山田幸士さん。炎のように熱く語る岩田さんと、水のごとく流れを止めない山田さん。お二人の名コンビが、迷宮のようなマテセンをナビゲートしてくれた。

サンプルを広げながら、尾州の特徴が挙げられる。「毛織物産地として有名だけど、それだけではなくフィラメント、絹、獣毛など何でも織れる産地。しかし、それが出来る職人も織機も減ってきた。昔の職人がカスタムした織機は唯一の製品を生み出していた。最近の織機は誰でもメンテナンスできる、つまり誰でも扱えるから製品も同質化してくる」。これはどこの産地でも抱える問題。

機屋として泉州や播州など様々な産地と仕事をしてきた岩田さん。その目から見た丹後について。「製品も工場も小さくていいなあ。尾州は一つの加工機械が40mくらいのもあるし、10年前だけど丹後の小幅1反とこっちの広幅50mの価格は変わらなかった。現在の平均は1メートル1,500円、一反50mで75,000円、壁紙やカーシートは1メートル200円かな。最高級品でも2,000円前後。一反は20キロくらいあって動かすのは一仕事だし、丹後の印象はとにかくコンパクトでいいなと思っている。尾州は加工まで分業化されているから競争原理が働いて費用もおそらく一番安い。しかも必要な量だけ発注できる」。

丹後の機屋が仕上げる白生地は、驚くほど低価格で卸されている。さらにそこから8割程をしめる糸代、電気代や機械のメンテナンス費用を差し引くと織り手にはほとんど残らない。この事実を知った時は衝撃だった。丹後も尾州も、先人の挑戦と技術の粋を集めた織物を生産しているのに…プロダクトとして、工芸として、織物にはいろんな姿がある。その境界線はどこにあるのだろう。

しかし、そこを織物で超えていくのが機屋。岩田さんは早くから産地内だけでは課題解決できないと見抜いて、産地をまたいだ製品開発に着手。「産地内のことはやり尽くしたし、若いやる気のある人と仲間として作っていく感覚じゃないとモノにならない。そして、やるなら高度な技の協業にしないと新しい価値は生み出せない。その技術でいうと、製織と水撚りは丹後にまかせないと。他の産地ではその不合理さと労力から手放してしまった。我慢よく繋いできた丹後の技術。ものづくりを最終的に支えるのは、生き残るのは、そこだよ」。水撚り、つまり八丁撚糸だ。

「尾州を支えているのはションヘル織機。維持が大変だけど、海外ブランドから指定で注文が入る。杼の種類も豊富で、変わった糸も多いからそのために調整用パットがついている特殊なものもある。鼓動と同じ80回転の織機」。今回の尾州訪問では現場を訪れることが叶わなかった。ションヘル織機のことは実際の振動を感じて機音を浴びてから、ひらく織に書き記したいと思う。

10万点のサンプルの間を歩きながらも、岩田さんの話は止まらない。

「国策としての繊維はもう無理。賃金の安いところに流れて、もっと底になる。韓国ではまだ繊維産業が国策として生きていて、中近東やアメリカにポリエステルの安価なものを輸出している。晋州(ジンジュ)にある機屋を見に行ったが、安価な先染めの糸を仕入れて使っていた。糸の品質と技術不足を織機の性能が支えている状態。準備工程の機械から日本の工場よりいいものを使っている」。

歩き疲れた訪問者のための自販機

製品としてはシルクネクタイ、ストールなど富士吉田と近いそうだ。昨年訪れた富士吉田では、古い織機を駆使して素晴らしい織物が生み出されていた。最新鋭の織機を扱う機場では、積み重ねられてきた技術が集約されていた。丹後も古くからあるシャトル織機に質の良い糸をかけて、技術をかけ織り上げている。織機、技術、糸。日本の産地が紡いできた織物が集められた場所、それがマテリアルセンター。時間がいくらあっても見切れないとほとんどの訪問者が話す、国内最大のテキスタイル資料館。

機場再訪を約束して、次の目的地「ヤーンフェア」へ。

JAPAN YARN FAIR

15年前から毎年開催されている「JAPAN YARN FAIR」。織物の原点である「糸=YARN」からの高付加価値のものづくり支援を目的に、公益財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンターが主催する、日本最大級の「糸」の展示商談会。出展企業は糸を扱う会社にとどまらず機屋、染め、撚糸、繊維関連機器に試験所まで多岐にわたる。

羊毛に獣毛、特殊糸、その工程や扱い、アパレル業界のシーズン毎の変遷…絹の和装産地では見聞きしない、幅広い情報とそのボリューム。未知の世界が広がっていた。隣接する会場ではファッションを学ぶ学生と機屋が協働するプロジェクトや「Bishiu TAKUMI Collection」など産地の様々な取り組みが紹介されている。

さらには「JAPAN TEXTILE CONTEST 2017」も行われて、そこには関祥汰さん*の作品が展示されていた。「ペーパーツイード」と名付けられた織物はモダンな素材感とクラシカルな表情がミックスされて、とても素敵。

 

*ひらく織レポート「ひらく織 最初の訪問者」参照

今回は衣装デザイナーの村上美知瑠さんも参加。富士吉田で出会った彼女は、ひらく織に興味を持って真冬の丹後を訪ねてくれた。関さんに続く、二人目の訪問者。

私たちの旅も2年目を迎えた。

記事 原田美帆 / 撮影 高岡徹

村上美知瑠

美しい丹後産地へ。東京から富士吉田、京都から丹後へと行き着いた2つの産地のそこでしか残り得なかった特別な織。風土や暮らしのようなものが根気強く丁寧に織り上げられているのだと、気がつけばそれぞれの感触を比べるように歩いていました。締めくくりに、尾州マテリアルセンターで、他産地同士の自然な交流が生まれたこと。「これからは4つくらいの産地の技術をまたいで生地づくりをしていくべきだ」という岩田さんのお話しを皆で伺えたことは、この旅の続き、日本のものづくりの未来への希望のように感じられました。

小池聖也

ヤーンフェアはずっと行きたいと思っていたので、今回行くことができてとても良かった。 自分の常識にない素材や織物を見て、新たな可能性を感じた。

高岡徹

マテリアルセンターのサンプル生地を収集する過程を聞いた時には一朝一夕では出来ることではなく、携わった方々の準備と産地を越えた未来を見据えた覚悟を感じた。
尾州産地は丹後のように後加工を組合が担うのではなく、織り、染め、加工すべて複数の民間企業が行っていて、それぞれに競争があり切磋琢磨してきた歴史から産地全体の底の厚さが伝わってきた。

テキスタイル・マテリアルセンター

JAPAN YARN FAIR

村上未知瑠 - SLEEP TRAVELLING

つづる織-もう一つの産地ルポ

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