YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

滋賀・湖東×近江上布/近江ちぢみ

湖東地方編Vol.2

麻とリネン。よく耳にするけれど、それが同じものなのか、どこから来ているのかも私は知らなかった。産地で得た情報を、すこし整理しておく。

麻織物には原料によって「苧麻(ちょま)=ラミー」「亜麻(あま)=リネン」「大麻(たいま)=ヘンプ」の大きく3種に分けられる。日本と韓国では苧麻、ヨーロッパでは亜麻が主に用いられてきた。苧麻は多年草として1年に複数回収穫でき、繊維は比較的太く長い。色は白く光沢があり、細番手の糸に向いている。亜麻は一年草として一年に一回の収穫、繊維は細く短いと言われ、色は特有のいわゆる亜麻色で苧麻と比較して中・太番手の糸に向く。これらの特徴は世界の産地や時代、繊維の取り出し方によっても見解が異なり、一概に太い・細い、長い・短いと分類するのは難しい。

日本に自生している苧麻は「苧(からむし) と呼ばれ、近江商人が東北や北陸から下り荷として持ち帰っていた。近江で栽培していた「地麻」と合わせて滋賀県や岐阜県の農家に加工に出して糸を績んでいたが、戦争中に贅沢品として苧麻と大麻の織物が禁止される。戦後に復興し、原料から全て国産で作られる上布は重要文化財となった「越後上布」や「宮古上布」が有名。他にも上布を伝承しようと活動している地域があり、近江上布伝統産業会館でも手績み糸から織物にしている。

一般的に使用されている苧麻は中国産のものが多い。国内の紡績会社は広島に一軒残っており、Vol.1で登場した新之助上布では国産紡績の苧麻を使用。「国内産は強度と表情がいいが、早晩すべて中国産になるだろう」と大西實さんは行く末を懸念していた。身近にある織物の歴史を少したどってみると、手に触れる感触が変わってくる。

世界を牽引するリネンウィーバー 株式会社林与

ビンテージのアイルランドリネンを使ったハンカチ、ストールブームの先駆けとなった柔らかいリネン、超太番手からカラフルな柄まで展開するリネンキッチンクロス、伝統工芸の絣織を現代によみがえらせた上布。数々のプロジェクトが、ある職人の手から生み出されている。

株式会社林与の林与志雄さん。

株式会社林与代表取締役 林与志雄さん

まずは工場にと通されると、そこには優に30台を超す織機が並んでいた。レピアにシャトル、ジャカードが乗っているものまで。一年前から若手スタッフが入り、その前にも研修生が何名か働いていた時期もあったが、数えきれないプロジェクトをほとんど一人で完成させてきたという。

織機の説明を受けるひらく織メンバー

「ストールブームの時に浜松からシャトルを10台。町内で出機が使っていたシャトルも移動させたよ。中古はかれこれ30台くらい買い取って、何かやろうかなという時に使えるように残してある。昔は3幅のレピアも5台あって長さ7メートルくらい。整経も大変だし、ビームだけで200キロあって。柄も斜行して厳しかったから15年前に手放して他の織機を入れたよ」。のっけから、ひらく織メンバーはその馬力に圧倒された。

産地内の機屋から豊田織機14台を移設した時にはクラウドファンディングを活用して資金を調達。与志雄さん自ら油圧式パレットを操り工場内の織機を大移動させた。3日間徹夜で設置し、数日後には最初の製品を織り上げている。高齢化による廃業から、旧式の織機はどんどん失われていく。シャトル織機に込められたものづくりの技術を引き継ぐことは、産地を問わない至急の課題なのだ。

二階に上がると、部分整経機が2台。その間には大量にストックされた糸、さらに奥に最新式大型インクジェットプリンターが見える。幅3メートルはありそうなプリンターはヤフオクで落札。これだけで一部門と専属のスタッフが必要になりそうな設備を前に、「これも面白いものができると思って手に入れたけど、その前に手捺染に興味が出ちゃった」。

整経機に食らいつく整経士 今井さん

高級ブランド向けのアパレル生地、デザイナーからの特注生地、そして自社商品のリネンキッチンクロス、リネンハンカチ、オーガニックリネン。定番品を織り上げるだけでも工場はフル稼働している。「うちだと製品にもよるけど1時間2.5~3メートルくらい織れる。それが何台もあって、利益は出せる。悪い商売ではないし、やれば何とかできるもの。斜陽産業を救ってあげようとか、そんなことじゃない」。そう言いながら、ノベルティ商品の企画や特殊な染めの製品まで、一見すると機屋の仕事を超えているとしか思えない依頼も受け止め、自ら奔走されている。「余力を残さないくらいやると、なぜかうまく回る」。笑いながら話すおおらかな姿に秘められた、ものづくりへの情熱。

幅広いバリエーションが並ぶ

「目の前にあるできることを、全部やってみる。先代から引き継いだ時には負債もあった。当時は十数人の織り手がいたけれど家族だけになって、自社製品もまだなかった。それから織機も入れ替えて、海外から研修生を受け入れて。今では現地の展示会で通訳や手伝いをしてくれて、販売にも繋がっている。糸商が手を出せない150番手の糸やオーガニックの糸、機料品も入手できるようになった。だから、今でも高いものをやるために底辺を覚悟しているよ」。受け入れざるを得ない状況から前向きなものを生み出す力に、感嘆するしかない。

その力が、若手をも引きつける。斎藤慧理さん。文化服装学院在学時に東京で開催されたテキスタイルマルシェで与志雄さんと出会う。「興味があるなら一度自分で来て、作業してみたら?でもスパルタだからあなたには難しいと思う」。慧理さんの闘争心に火がつき、二週間のインターンは三週間になり、卒業制作までも完成させてしまう。卒業後に工場から徒歩三分の場所に移住し、機屋への道を歩み出す。定番製品の生産から新しいプロジェクトまで、積み重ねた時間の密度は立ち姿や与志雄さんとのやりとりに現れていた。林さんは現在もガッツのあるスタッフを募集中。厳しくもやりがいのある創造の現場に興味がある人は、ぜひ連絡を。

生き生きと話す斎藤慧理さん

慧理さんが現在力を入れているのは絣織物。近江上布の王道であり、林与の先代たちが生み出してきた何百種もの柄を現代に蘇らせるプロジェクト。見本帳はとびきりの粋を集めたようなデザインの宝庫だった。現在、一般的に使われているもの以上に細い糸で織り上げられて艶があり、色あざやかな発色は当時のまま。堅牢度に優れたスレン染料などで仕上げられていた。

着物の需要低下と共に断念されていた絣染めの製品は、復活させるとなれば一瞬だった。染めの先生に数時間学んだ後は染料を大人買いして、型紙を彫り、反応染料で染めて、蒸して。繰り返すようだが、通常であれば専属のスタッフが数ヶ月をかけてたどるであろう手順を「切羽詰まって1日とか、数日で形に持っていった。それくらいで出来ると量産にも目処がつく」とやりきってしまう与志雄さん。食らいついていく慧理さん。ここには「無理」と言う概念は存在しないのだろうか。一方で、アーカイブを作って柄をスキャン、スケールを調整して現代的な製品へプリントする計画も進めている。

与志雄さんは林与四代目。農家の手仕事であった織から機屋への成長、先代たちの築き上げた苦労と成功。「この地に根付いたものを継承したい」。その思いは、世界を牽引する超細番手織物に織り込まれている。手にしたビンテージアイリッシュリネンハンカチは、湖東に生きる機屋たちの人柄をそのまま映したような織物だった。優しい輝きをたたえる、しなやかな麻。

記事 原田美帆 / 撮影 高岡徹

今井信一

話を聞いて感じた事は、どの職人さんもいろんな事に怖がらずチャレンジされてるということ。今後僕も失敗したとしても、チャレンジしていくことが大事だと思った。

高岡徹

機屋としてのものづくりのスタンスについて考えさせられました。

羽賀信彦

大西新之助商店さんのクレイジー上布と呼ばれる生地や近江ちぢみの整理加工は手間を惜しまない手作業仕上げ。林与さんの工場にはぎっしりと詰まった織機、なかには初めてみる織機メーカーの物もありほとんどがシャットル織機でテンション上がった!! 湖東産地の機業や加工場は小ロットで丁寧に対応する生産体制がとても印象に残った。あと出会う方々がスゴく温かみのある方というのも印象的だった。

株式会社 林与

つづる織-もう一つの産地ルポ

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